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 秋口まで教室にいた滝口さんと高橋先生は、もちろん同僚としての交流があった。のみならず、篠宮君と高橋先生は古くからの友人同士だ。  高校卒業後、すぐ調理師学校へ入った篠宮君と、大卒で会社勤めを経てから調理師学校へ通った高橋先生。二人は歳の差こそあれ、同級生として同じ学校で二年間を過ごし、確かな友情を育んだ仲。  そして、そもそも篠宮君と滝口さんを出会わせたのが、正に高橋先生なんだった。  それはとあるカフェでのこと。篠宮君と高橋先生が二人で食事していると、偶然、滝口さんが来店した。彼は高橋先生の姿に気付くなり、いつものように同席を申し出て……そこで、篠宮君と運命的な出会いをしたんだ。  あの二人は一瞬で気が合ったみたいだ、なんて。いつだったか、高橋先生は話してくれた。  そう、僕と篠宮君が知り合いだとわかった時、苦笑混じりに。もちろん、高橋先生は始めこそ「あくまで友人として」という体裁を取ってはいたんだけど……、次第に、二人が恋人同士だということを誤魔化さなくなった。  例えば篠宮君側から、「瑠姫には隠してないよ」とでも聞いたのかもしれない。  だから、僕がそれとなくパーティーの招待状を二人に譲るよう勧めた時、その言葉の裏には「恋人同士ならより楽しめるはず」っていうニュアンスもあったはずなんだ。   それを聡く感じ取ったからこそ、高橋先生は声音に静かな躊躇いを響かせたんだろう。──電話越しの、ゆるやかな気遣い。 『あの二人はもう別れたと、オレは聞いているので……そうですね、招待状の譲り先は、また他を考えてみます』  どうして?  短くて強い戸惑いが、ぐるぐると胸の中に巡る。……たとえ本人たちにこの疑問をぶつけることが出来たとしたって、彼らには、大切なその答えを部外者の僕なんかに打ち明ける義理はない。  恋愛はどうしたって二人だけのもの。それくらい、僕にもわかってる。  だけど。  でも。  その話を知ってからずっと、ずっと、右手首が熱い。 (滝口さん……)  あの日、大輔に引っ張られて退席しようとした僕を、彼が掴んで引き止めた。……あれには、どんな意味があったんだろう。

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