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 ふにゅ、と唇をやわらかな感触に押されて、それがふわと離れてゆく瞬間、小さくついばまれる。なんだか焦れるような、痺れるような、甘い静電気……。それがたまらなくて、僕の喉は勝手に震えて、声を零した。 「……ん、」 「瑠姫君」  滝口さんが僕を呼ぶ。あったかな羽毛そのものみたいな声音。ふんわりと、笑ってる。 「ちゃんと息、しないと……キス、続けられないよ?」 「──」 (息)  していい、の? (できない)  だってすぐ目の前に、ほんとに触れ合う近さに、滝口さんが居て。  僕は自分の頭を退こうとする。……ちょっとだけでも距離を取ろうと、その隙間で呼吸が出来ないかなと試してみるのに、残念ながら、後ろ頭を包んだ滝口さんの手はびくともしない。それどころか、より近くへと引き寄せられてしまう。 「ふ、む……っ」  さっきより強く、しっかりと唇同士が合わさる感触がして、そこで僕の息も限界。ふっと解放された鼻腔から、肺の中いっぱいに、滝口さんの体温が流れ込んでくる。 「ん……、んっ、ん……」 「瑠姫君……」  何度も角度を変えて、そのたびにちゅうとついばまれて、僕は滝口さんのキスに溺れてく。触れ合う唇も、合間に吸う息も、甘くてあったかくて。まるでいっしょに、お湯の中を泳ぐみたいに。  そのゆるやかな熱に、全身が浸されてく。  ふ、と水面へ上がるようにして唐突にキスが終わると、僕の頭は酸欠と昂揚でくらくらしてた。 「瑠姫君、気持ちいい……?」  しっとり濡れた僕の唇に、滝口さんのやわらかな問いが触れる。お互いの間に、隙間なんてぜんぜんないくらいの近く。とろけ合う粘膜の温度が心地良すぎて、離れられない。  僕が「うん」と頷くのすら、滝口さんと交わす舌の上に響いてた。

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