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 そうしていっしょに眠ったら、妙にすかすかするみたいなこのさみしさも、朝には消えてるのかもしれない。 (でも)  そんなこと、望んでいいのかな……。  好きですと、恋を伝えた。  好きだよと、答えてもらった。  そうしたら、二人は恋人? 恋人は、何をどこまで許すものなんだろう。  滝口さんは僕に、どこまで許してくれるんだろう? 「瑠姫君。……眠い?」 「……」  ゆらゆらと考えながら、僕は本当に意識を手放してたみたいだった。ゆっくりと瞼を持ち上げると、やわらかく苦笑した滝口さんがこちらを覗き込んでいる。彼の髪はきれいに乾かされていて、雫ひとつ分の水気すら残していない。  それどころか、部屋にはいつの間にか、つくりたてのごはんの良いにおいまでしてるんだった。 「僕……」 「ごはんよりもう眠っちゃいたい? それなら、寝室に案内するよ。俺のベッドを使ってくれればいいから」  きゅうと音を立てるみたいに、心臓が縮む。それは痛みなのに、おなじくらい甘い。どうしてか泣き出してしまいそうになって、僕はぶんぶんと頭を振った。  そうしたら、目の前の滝口さんが困ったように眉を下げてしまう。 「いや?」  そうじゃ、なくて。  彼の勘違いを、いまの僕は解決出来ない。眠いみたいなさみしさが体中を支配していて、どうしても、ちゃんと理屈立てて話すことが不可能なんだった。  だから、ただ思いつくままの言葉を唇に載せる。 「滝口さん、あったかい体に、なった……?」 「え?」  唐突な僕の質問に、最初こそ、彼も目を丸めたけれど。少しだけ考えて、すぐに、自身がバスルームへ向かう前のやり取りを思い出してくれたみたいだった。  滝口さんはどこか嬉しそうに、ふわりと破顔する。 「なったよ。瑠姫君のおかげ……」 「確かめ、させて」 「!」 「ぎゅってする」  言いながら、僕は両手を滝口さんに向けて伸ばす。それはたぶん、抱っこをせがむ小さな子供に似てた。だって、くったりと眠い僕の体はソファに沈み込んだまま、ちっとも起き上がれそうにないんだ。

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