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「……きぐ、ちさ、ゆびっ……」 「指? まだ痛い?」 「ん、ん」  ちがう。僕は彼の肩に縋りながら、息も絶え絶えになって首を振る。否定のためなのか、身体の内側に湧き起こってやまないおそれを逃がすためなのか、自分でもわからなかった。 「ゆび、な、なが、……ぃの、ずるい……っ」 「ずるくないよ」  根元まですっかり埋めたそれを、滝口さんはゆぐゆぐと()()れする。憎らしいくらい器用な指先は、僕の気持ちいいところをちょっとも逃さずに、くにくにと押し撫でるまま。 「瑠姫君のなかをたくさん、たっぷり、いっぱい触ってあげるための指だよ」  なんで、赤ずきんちゃんのニセモノのおばあちゃんみたいなこと、言うの。ぜんぜん余裕綽々(しゃくしゃく)で、嬉しそうで、僕をどう料理してやろうかって楽しんでる。  それは正真正銘、中身がオオカミのおばあちゃんと同じなのかもしれなかった。 「瑠姫君、こっち……舐めたら、泣いちゃうかな……」 「え。──ン、アッ、ひ、ッ」  なに? と思う間もあればこそ。僕の身体は急にひどい荒波の上へと投げ出されたみたいに、シーツの海を悶える。もう自分の手足じゃなくなったんだと思うくらい、勝手に跳ねたり、ぎゅっと握り込んだり。逃げられるものなら逃げたい。でも動けない。 「あ、あ、」  開きっぱなしになった唇から、熱い息と声が洩れてく。びく、びく、と痙攣(けいれん)しながら浮く腰を、それでも許さずに、滝口さんの長い指が攻め立てる。……なか、から。 (も、う)  僕の内側の気持ちいいところを、容赦なくぐりぐりする指。  それから、下腹で勃ち上がってるものを好きなようにぐちゅぐちゅに舐め(すす)る、大きなあったかい口。  いっしょに与えられる、二つの愛撫。どっちも同時に、とんでもなく気持ちよくて、僕の頭の上に大鐘ががらんごろん鳴ってた。滝口さんの声は聞こえるのに、なにを言ってるのかはわからない。まともな思考も出来ない。身体のぜんぶがつよく痺れるみたいになって、気持ちいい。──気持ちいい、ことしか、わからない。

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