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第2話

 王妃シェリダンの気分転換もかねて、国王アルフレッドが三日間の休暇をセレニエ離宮で過ごした間、当然近衛隊長であるリュシアン・ヴェルリエ元帥は国王夫妻の側で護衛の任についていた。何事もなく穏やかに三日間の休暇を終え無事に城まで帰ったアルフレッドが労いとして離宮に付き従った近衛や女官たちに二日間の休暇を与えると告げ、リュシアンもまた雑務をこなしてから愛馬に跨り早々に城を出ることとなった。  高い位置で一つに束ねられた長く美しい漆黒の髪を靡かせて栗毛の馬に跨るその姿は、威厳のある近衛隊長の隊服と相まっていっそ神秘的ですらある。水晶によって選ばれた男の王妃であるシェリダンも美しい容姿をしているが、リュシアンのそれは彼とはまた種類が異なるだろう。シェリダンが儚げな慈愛と慈悲の神のようであるならば、リュシアンはまさに毅然と頭を上げて指揮する軍神というべきか。  切れ長の瞳に日に焼けぬ白い肌、軍随一の俊敏さを誇るスラリとした体躯のリュシアンを、皆は〝麗しの近衛隊長〟と噂する。だがその見た目からは想像もできぬほどに何事にも妥協を許さない彼を、近衛隊員は〝鬼の近衛隊長〟と陰で呼んだ。それでも皆がリュシアンを慕い、その指示に従うのは彼が理不尽なことをせず、誰よりもリュシアン自身に厳しいことを知っているからだろう。

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