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第6話

それからは週末のおさらいの様だが、レクター博士は静かに巧みに行為を変化した。 ウィルは四つん這いになり、レクター博士に尻を踏まれると白濁を散らす。 だがそんな中、ウィルは抗えない排尿感に襲われた。 そして正直にそれをレクター博士に伝えた。 レクター博士はやさしくバスルームに行きなさいと言ってくれた。 だが何も出ない。 そんなことを三回も続けていると、ウィルはとうとう泣き出した。 「どうした、ウィル? 我慢しないでトイレに行きなさい」 レクター博士はあくまでもやさしい。 「…だって…行っても何も出ない…! 苦しい…! もう嫌だ…!」 レクター博士が泣きじゃくるウィルの頭を支えて自分に向かせる。 「そんなに苦しいのなら私が手伝おう。 どうかな?」 ウィルが嬉しそうに丸い大きなグリーンの瞳をパッと開く。 「…レクター博士…! 本当に?」 「本当だよ、かわいいウィル」 そしてウィルとレクター博士はバスルームに向かった。 確かにウィルはまた排尿出来なかったが、レクター博士が後ろからペニスを扱いてくれた。 排尿感の中、レクター博士の手で達するのは想像を越えた快感だった。 ウィルはその場に崩れ落ち、レクター博士がウィルを抱き上げてマットに運んだ。 それからのウィルは排尿感に襲われると足をM字に開いて座り、レクター博士は後ろからウィルを抱いて、前に手を回し雄を扱いてくれるようになった。 そうして達した時には、ウィルはお礼にレクター博士の靴にキスをする。 別にレクター博士に強要された訳では無い。 ウィル本人が『キスをするべきだ』と思ったからだ。 そんなことを繰り返しながらウィルが『空っぽ』になると、レクター博士がウィルの雄を赤い紐で縛った。 そしてまたウィルは四つん這いになり、尻を踏まれ、何も出さずにイく。 そしてそれが苦痛になってウィルがぐずり出すと、レクター博士が水を飲ませてくれた。 勿論、犬用の皿で。 ウィルがお礼にレクター博士の靴にキスをすると、泡だらけのバスにウィルを入れて、丁寧に身体と頭を洗ってくれた。 バスから出ると髪まで乾かしてくれて、真っ白なシルクのパジャマに着替えてベッドに横になるように言われて、ウィルはその通りにした。 呼吸器をされたような気がするが、覚えていない。 覚えているのは『絶対的な快感』と『絶対的な安心感』だけだ。 そうしてウィルがウトウトしているとレクター博士に、「ディナーの時間だよ」と言って起こされた。 レクター博士のダイニングルームは素晴らしい部屋だった。 レクター博士はフランス料理を作ってくれた。 しかもフルコースで。 ウィルは床の絨毯の上に敷かれたマットの上で、犬用の皿で、全裸で四つん這いになって尻を上げたまま料理を堪能した。 飲み物用の皿には赤ワインが注がれた。 ウィルはペチャペチャと音を立てて赤ワインを『飲んだ』。 ウィルはデザートまでペロリと完食した。 『色々あったし』お腹が空いていたのだ。 そしてレクター博士は、ウィルの汚れた顔や身体を綺麗に拭いてくれた。 それからまたウィルはレクター博士に連れられて寝室に戻り、シルクのパジャマを着て眠りについた。 ウィルがパチッと目を覚ます。 目の前には暗闇が広がっている。 だが分かる。 見知らぬ家具、見知らぬ間取りの部屋。 左腕の違和感。 すると「やっと目覚めたね、眠り姫」とレクター博士の声がして灯りが点いた。 「…レクター博士…僕は…?」 戸惑うウィルにレクター博士がやさしく、「今朝、私が話したことを忘れてしまったかな?」と言った。 ウィルは脳をフル回転させる。 そして力無く笑った。 「僕は倒れて、無断欠勤をしたんでしたね。 迷惑を掛けてすみません」 「気にしないで。 私は君の主治医なんだから」 レクター博士が穏やかにそう言うと、ウィルが独り言の様にポツリと言った。 「ジャックにも迷惑を掛けた…」 「ジャックも気にして無いよ。 今は自分の状態を最優先に考えて」 「…はい…」 「おや、点滴も終わった。 タイミングが良いね。 今、外してあげよう」 レクター博士はそう言うと、ウィルの左腕から慣れた手付きで点滴を外していく。 全てが終わると、レクター博士はウィルに微笑みかける。 「ウィル、お腹が空いて無いかい? 君は私が発見してから12時間以上眠っていたんだ。 もっとかもしれない。 水分や栄養剤も薬と一緒に点滴で補っていたが、大丈夫?」 「ええ。 何だかお腹が一杯の感じです。 点滴のせいかな?」 「それは有り得るね。 栄養剤が全身に回れば、満腹中枢を刺激することは少なくない」 「じゃあ帰って良いですか?」 「今夜は泊まって行きなさい。 まだ君が意識を失った理由も解らないし、今夜はカウンセリングはもう無理だろう? 理由が解らなければ、また失神する可能性もある。 犬達の世話はブルーム博士に頼んであるから心配無い。 明日の朝、家まで送ろう」 「…そうですね。 何だか凄く疲れてる…。 怠いし、眠い…」 「君は私が発見した時、全身を硬直させ痙攣を起こしていた。 それが薬が効くまで続いたんだ。 疲れる筈だ。 眠りなさい。 ここは安全だ。 ジャックにも君が目覚めたと連絡を入れておく」 「ええ…お願いします…」 ウィルがスーッとまた眠りに落ちて行く。 ウィルのあどけなく、美しい寝顔。 レクター博士はウィルの耳元で「ここは安全だ」と再び囁くと、灯りを消して寝室から出て行った。 ウィルは翌朝目覚めると、部屋付きのバスルームでシャワーを浴びた。 目覚めは爽快で、気分が良い。 だがどんなに考えても失神した理由が分からなかった。 ジャックと電話をしたことは覚えている。 我儘を言って泣いてしまったけど、ジャックはやさしく受け止めてくれた… けれどその後は? 電話を切った直後に意識を失ったのだろうか? ウィルはそこまで考えて、考えるのを止めた。 どうせ今の自分には分かりっこない。 レクター博士に興味は無いけれど、博士は親切で有能だと認めざる得ない。 だったらレクター博士のカウンセリングを受けるのが、不調を改善する一番の近道だ。 ウィルはそう思うと心が軽くなった気がした。 博士は万全を期す、完全主義者だとウィルはしみじみ思った。 博士は倒れたウィルを自分の自宅に運ぶ際、ウィルの着替えも運んでくれていたからだ。 シャツやジーンズやジャケットは勿論、下着や靴下、靴に至るまで。 ウィルは洗面台にあった個別包装された客用と思われる歯ブラシやスキンケア用品も使わせて貰った。 そして身支度を整え、軽くベッドメイキングをすると一階に降りた。 正確に言うと、降りようとした。 だが階段の最後の段の下に、白いマットが縦長に敷かれていて、踏むのが躊躇われて一瞬立ち止まった。 すると直ぐに一つの扉が開き、Vネックの赤いニットにジーンズというラフな出で立ちのレクター博士が現れた。 「おはよう、ウィル。 もう出掛けられるかい?」 「…はい」 ウィルの目はマットに釘付けだ。 「ウィル? さあ、マットは踏んで良いから降りて来なさい」 穏やかにウィルを促すレクター博士の声。 踏む…? まさか…! こんな大切な物を…!? 「あ、あ、あ、あああああ!」 ウィルは叫びながら服を脱ぎ出す。 レクター博士は、ただ、ウィルを『観て』いる。 ウィルは靴下も脱いで裸になると、マットの上に四つん這いになって尻を高く上げる。 レクター博士がウィルの巻き毛をやさしく撫でる。 「偉いね、ウィル。 君は物の価値を良く分かっている。 だけど『君がして欲しいこと』は今はお預けだ。 服を着なさい。 そして服を脱いだことは忘れるんだ。 そうすればまた『君がして欲しいこと』を『君がしたいだけ』明日してあげよう」 「…明日…」 「そう、明日。 約束だ。 君と私だけの秘密の約束」 「…ぼくとはかせのひみつのやくそく…」 ウィルはたどたどしくそう言うと、立ち上がり洋服を着始めた。 ウィルはレクター博士に家まで送って貰うと、まず駆け寄ってきた犬達に、「昨日は寂しかっただろう?ごめんね」と言って抱きしめ、犬達の朝食の準備をした。 部屋の中は綺麗に掃除されていて、小さな段ボール箱がベッドの脇に置かれていた。 きっとウィルがぶちまけてしまった引き出しの中の物が入っているのだろうが、ウィルは中身を見なかった。 まだ午前7時。 レクター博士の家で身支度は済ませて来たから、時間に十分余裕がある。 ウィルは犬達が朝食を頬張っている間、レクター博士が持たせてくれた朝食を食べた。 ウィルは遠慮したが、レクター博士が「もう作ってしまったから」と言って料理の入った容器を見せてきたので、断れずに受け取ったのだ。 それにレクター博士本人に主治医以上の興味は無くても、レクター博士の料理は『美味しい』。 ウィルはもしかしたらジャックから連絡があるかもしれないと思い、スマホもテーブルに乗せて食事をしていた。 ウィルはアカデミーのオフィスのデスクに着くと、アラーナに『犬達の世話と掃除までしてくれてありがとう。僕はもう大丈夫。アカデミーに出勤してるから。』とメッセージを送った。 するとアラーナから『良かった!今忙しくて電話出来ないの。良かったらランチどうかしら?』と返信が着た。 ウィルは『OK。じゃあ君が店を決めて。奢るから。』と返信してから、本部長のオフィスに行って昨日の無断欠勤を謝った。 本部長は「レクター博士から詳細は聞いてるよ。お大事に。今日の講義は手抜きをしなさい」と笑って済ませてくれた。 ウィルは『レクター博士からの詳細』が少し気になったが、レクター博士がもしウィルの精神状態を危険だと判断して本部長に報告したら、ウィルは即刻休暇を取らされるだろうから、本部長の態度や言動で問題無いと思い、頭を切り替えて講義の準備をした。 そうしてウィルが教室に向かう頃、レクター博士のオフィスの電話が鳴った。 電話のディスプレイには『公衆電話』と表示されている。 レクター博士が優雅な仕草で受話器を取る。 「はい」 『レ、レクター博士! 俺だ! 話せるか!? 話しても良いんだよな!?』 「勿論だよ、ジェフ。 今は君の時間だ」 『あ、あいつらがやって来た! やっとこの俺を認めたんだ…! やっとな!』 「認めた? 何を?」 『何をだとう!? 俺が強敵だってことだ! 侮れない相手だってことだ!』 怒鳴る『ジェフ』にレクター博士が心から残念そうに言う。 「ジェフ。 何のことだか分からないな。 テレビやネットのニュースにも新聞にも、君が強敵で侮れない相手だなんて出ていないよ」 『嘘だあああ! この俺様が爆弾を再開したら、ヴァージニアのお偉いFBIが、のこのことシアトルくんだりまでやって来たんだぞ!』 『ジェフ』が一際大きく怒鳴ってもレクター博士は動じず、同情に満ちた声を出す。 「ジェフ、そう興奮しないで。 とても残念だが『ヴァージニアのお偉いFBI』は君のことを『侮っている』らしいね」 『…そんな! 俺は頑張った…頑張っているのに…なぜ誰も彼も俺を認めないんだ…』 一転して『ジェフ』はメソメソと泣き声になる。 「ジェフ…そんなに気を落とさないで」 やさしいレクター博士の言葉に、『ジェフ』が再び怒鳴る。 「『気を落とさないで』だとう!? そんなこと別れた女房だって言える! あんたと話すのに幾ら支払ってると思ってるんだ! もっと気の利くアドバイスはねぇのかよ! あんた天才の博士なんだろう!?」 レクター博士はひと呼吸置くと、重々しく言った。 「君は遠回りをしている」 『と、遠回り?』 戸惑う『ジェフ』にレクター博士が冷徹に宣告する。 「そうだ。 君は本当の敵を怖がっている。 もっと本気を出さなければいけない。 君は『侮れない存在』なのだから。 『のこのことシアトルくんだりまでやって来た』リーダーに思いを伝えなければ」 『リーダー…! ヴァージニアのお偉いFBIの中でも一番傲慢なジャック・クロフォード!』 「ジェフ、健闘を祈る」 レクター博士はそう言うと、自ら電話を切った。

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