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第一章・11
「ネコも、こんなに賑やかな星空をみているのかもしれませんね」
「そうだな」
すこし冷たい夜風さえ、心地いい。
英治は星々に抱かれ、心身共にくつろぐひとときを味わった。
「お礼を言わなきゃね、鹿久保くん」
「お礼なんて」
「なにかご褒美をあげるよ。何がいい?」
ご褒美などいりません、と言いかけて、伊予は言葉を飲み込んだ。
「じゃあ、ひとつ」
「言ってみて」
もうしばらく、こうして傍に居させてください。
英治の前では好意をハッキリ口にできない伊予の、精いっぱいの言葉だった。
そして英治はにっこり微笑むと、この満天の銀河のように心を開いた。
「それは、こちらから願いたいほどだよ」
二人寄り添い、夜空を眺めて過ごした。
無邪気に星渡りなどして、健やかな時間を愛おしんだ。
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