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第二章・3
「今度、そのお店紹介します。『カフェ・がらくた』って言うんですけど」
「楽しみにしてるよ」
ちょうど食後のコーヒーが運ばれてきて、二人で食事の締めくくりに入った。
「鹿久保くん、このコーヒーはどうかな。君の舌は、満足かな?」
(これはチャンスなんだ。こんなに大沢さんとお近づきになれる機会は、二度と来ないかもしれない)
「ちょっと酸味が強いかな。私は充分美味しいと思うんだけど」
(言うんだ、勇気を出して!)
「鹿久保くん?」
「あ、あのッ! 大沢さんって、好きな人とかいますか!?」
突然の伊予の質問に、英治はきょとんとしていたが、幸い笑うことなく誠実に答えてくれた。
「うん。好きっていうか、気になってる人がいる」
「え! 誰ですか!? 社の人ですか!?」
恥ずかしいんだけど、と前置きをして、英治は語った。
「時々、帰りの電車で一緒になる人がいてね。遠目でしかいつも見られないんだけど、雰囲気のいい人なんだ」
話しかけたいけど、勇気が無い。
そんな英治の言葉に、伊予は打ちのめされていた。
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