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第二章・4
「ど、どんな感じの方なんですか?」
やっとの思いで、そう言うと。
「サラサラの長い黒髪でね。華奢で色白なんだ。膝上のスカートを履いてることが多いかな。黒のストッキングがこう、色っぽくてね」
どきん、と伊予の胸が打った。
「その方、どの駅で降りますか? もしかして、白石で降りたりしませんか?」
「あ、その通り。よく解ったね」
え、あ、いや、と伊予は言葉を濁した。
「ぼ、僕もその人見たことあるかもな~、って」
そう、と英治はただただいい笑顔だ。
「綺麗な人だもんね。目立つよね」
「はい……」
コーヒーを飲み終え、英治は立ち上がった。
「じゃあ、行こうか。今日はありがとう」
「いえ! 僕の方こそ、すっかりご馳走になってしまって!」
英治は遅くなったから、とタクシー代まで払ってくれた。
車の後部座席で一人になった伊予は、溜息をついていた。
「はぁ……。大沢さん……」
好きだ。
好き、好き、こんなに好き。
だのに、大沢さんは!
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