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第一章・3

 くらり、ときた。  体が、今までとは違う熱を帯びる。  この異様な感じの正体を、凱は知っている。  しかしそれは自分でも認めたくない感情なので、わざと握った手をぱしんと払うと、さっさとその場を後にした。  終業のベルが鳴り、周囲はばらけだした。  今しがたの試合の興奮を口々に語り合いながら、みな体育館を離れてゆく。  凱も屋外へと出てぶらぶら歩き始めたが、体の熱は一向に冷える気配がない。  それどころか、どんどん火照っていく心地だ。 (欲情、してんだ。俺は)  練習試合とはいえ、実力者の怜也相手の攻防だったのだ。  そのぎりぎりの緊張感で興奮した精神に、あの美しさは、色香は毒だ。  馬鹿、相手は男だぞ、と首を振る。  両手で頬を軽く叩いて、眼を覚まそうと努力する。    だが、怜也の姿は、なかなか頭から離れてくれない。  自分の下に組み敷かれた、あの体。  どうにかしてしまいたいという欲望が、突き上げてくる。  こんな時は、さっさと抜いてスッキリしてしまうのが一番なのだが、一人でとなると危うい。  きっとあの美しい少年の姿を思い浮かべながら、果ててしまうことになるだろうから。 (男をオカズにひとりエッチなんて、御免だぜ)  凱は、体育館周辺にいた少女に声をかけた。  手近なガールフレンドで発散させてしまおう、という腹だった。  自分と同い年のこの少女は、ありがたいことにしばしばお相手をしてくれる。  初めての時はすでに処女ではなかったし、気軽にセックスができる格好の『お友達』だった。

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