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第一章・6

 グリーンに水をやる手が、かすかに震えている。  まだ動揺しているのか、と怜也はため息をついた。    さっきは、ひどく驚いた。  遊び人の凱が、いろんな女の子と付き合っていることは知っている。  しかし、まさか屋外で、授業の終わったその足で情事に耽るとは。  そして、自分のとったあまりにも情けない言動にうなだれた。  ごゆっくり、なんて。  慌てて走り去る、なんて。 「僕ももう高校2年生なんだから、余裕のある態度をとりたかったのに」  まだ幼いころから、周りより一歩も二歩も大人びた行動を取る凱が羨ましかった。  そして、憧れていた。  一生懸命背伸びをし、何とか追いつこうとがんばった。  でも、一歩近づけば二歩、二歩近づけば三歩と凱は遠くなる。  どんどん離されていってしまう。

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