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第一章・8

「ん、んんッ!」  怜也は、もがいた。  もがいて暴れて、逃れようと身をよじった。  それでも凱は、腕にこめた力を緩めない。  重ねた唇を、離さない。  酔ってるんだ。  酔ってるから、ふざけてるんだと、怜也は固く眼を瞑った。  そのうち飽きて、帰るはず。  しかし凱は飽きるどころか、じっくり唇を味わってくる。  舌が、咥内に差し込まれてきた。 「んんぅ!」  喉奥に逃げる怜也の舌を探り、舐めてくる。  繰り返し繰り返し、優しく撫でてくる。  静かに去っていった舌は、甘い響きで囁いた。 「力、抜け」  そして、再び唇が重ねられた。  凱の舌。  ゆったりと口の中で動いている。  恐る恐る、怜也は舌を伸ばして触れてみた。  待っていたかのように応じてくる凱の舌は軽く踊り、絡ませてきた。  柔らかい凱の舌は、ひどく心地いい。  絡めあっていると、ただ気持ちいい。  人の舌とはこんなに柔らかいものなのかと、怜也は口づけに夢中になった。

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