9 / 144
第一章・8
「ん、んんッ!」
怜也は、もがいた。
もがいて暴れて、逃れようと身をよじった。
それでも凱は、腕にこめた力を緩めない。
重ねた唇を、離さない。
酔ってるんだ。
酔ってるから、ふざけてるんだと、怜也は固く眼を瞑った。
そのうち飽きて、帰るはず。
しかし凱は飽きるどころか、じっくり唇を味わってくる。
舌が、咥内に差し込まれてきた。
「んんぅ!」
喉奥に逃げる怜也の舌を探り、舐めてくる。
繰り返し繰り返し、優しく撫でてくる。
静かに去っていった舌は、甘い響きで囁いた。
「力、抜け」
そして、再び唇が重ねられた。
凱の舌。
ゆったりと口の中で動いている。
恐る恐る、怜也は舌を伸ばして触れてみた。
待っていたかのように応じてくる凱の舌は軽く踊り、絡ませてきた。
柔らかい凱の舌は、ひどく心地いい。
絡めあっていると、ただ気持ちいい。
人の舌とはこんなに柔らかいものなのかと、怜也は口づけに夢中になった。
ともだちにシェアしよう!