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第一章・9

 長い、長いキス。  唇を離すと、怜也は甘い息をついた。  瞳は潤み、凱の姿をうっとりと映し出していた。 「酔って……」 「ん?」 「酔って、いるんだろう? だから、こんなことを」  自分はからかわれているのだ、という気持ちは怜也の中にしっかりとあった。  そんな怜也に、酔ってます、俺は酔ってますよぉ、と歌うように答えた後、凱はもう一度軽くキスをした。 「酔ってるから、こんなこともしちゃう」  そして、怜也をソファに押し倒した。 「や……」  凱の唇が首筋を吸ったとき、怜也はただそれだけしか言えなかった。  腕を縮め、固く身をすくませ、まるで動けなくなってしまった。 「イヤじゃあねえだろ。俺のこと、嫌いじゃねえな? ん?」  そのとおりだ。嫌いじゃない。  だから自分は、きっとキスされたときもおとなしく許したのだ。  本気でイヤなら、拳をぶつける勢いで拒めたはずだ。  軽く触れるように、そして時には強く吸うように、凱の舌は怜也の首筋を遊ぶ。  彼が動くたびに、柔らかい彼の髪が顎に、首に触れ、怜也は震えた。  肌が逆立つような心地。  それもまた嫌悪からくるものではないのだ。

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