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第一章・12

 自分の部屋へ戻ると、凱はもう一本ワインの口をあけた。  一杯飲んで、大きくため息をついた。  体はひどく昂ぶっている。  早くどうにかしてくれと、性欲が悲鳴を上げている。  でも、それでも怜也を抱けなかった。  無理やりにでも犯すつもりで出向いたのに。  目を閉じて浮かんでくるのは、かわいい弟分だった怜也の姿。  幼い頃から、ひどく懐いていた。  一生懸命ついてくる、その姿。  そのたびに、わざと突っぱねてきた。  くやしかったら早く追いついてみろと笑っていた。  いつの間に、あんなに綺麗になったのだろう。  心をとらえて離さない存在になっていたのだろう。  酔いにまかせてねじ伏せたことを、今ではひどく後悔していた。  傷つけてしまったそのことを、後悔した。  いたぶって確信したのは、本当に彼は何もかもが初めてだということ。  キスも、愛撫も、初めて受け止めることだったということ。 「あぁ、自己嫌悪」  怜也の言葉を真似てみた後、もう一杯ワインをあおった。

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