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第一章・13

 凱が離れていった後も、怜也はソファにうずくまったまましばらく動けずにいた。  乱れた服を握りしめ、震えていた。    追いつきたい、肩を並べて立ってみたいと憧れていた凱。  彼が、せっかく自分の方からやって来てくれたのに。  あのまま抱かれていれば、同じくらい大人になれたに違いないのに。  なぜかこぼれてしまった涙を、ぬぐった。 「恥ずかしい」  泣き顔を見られた。  でも、やはり怖かったのだ。  それ以上に、悲しかったのだ。  酔って絡んでくるように、体を求められたことが悲しかった。  酔狂でひとつになって、翌日はやはり今までと同じように、つかず離れずの関係であり続けることが悲しかった。  彼の大勢のガールフレンド。  気が向いたときにだけ慰めあう、そんな体だけの関係になることが悲しかったのだ。  それでもいいじゃないか、と囁いてくる心の声。  幼い頃から憧れだった凱に認めてもらえるのなら、それでもいいじゃないかと思いこもうとする心の一部。  でも、違う。  僕が求めていたのはそんなことではない、と首を振る。  凱、いつの間にこんなに僕の心を占めていたのだろう。  胸から溢れてしまうほど、いっぱいいっぱいの想い。  声もたてずに、ただ涙が流れた。

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