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第二章 恋は一歩ずつ昇る階段
翌朝、珍しく凱は共同食堂へその姿を現した。
男子寮の個室には、簡易キッチンが設けてある。
ほとんど自炊でその腹をまかなっているが、決められた時刻に、決められたメニューで腹を満たすなどごめんだ。
食べたい時に、食べたい物を食っていたいのだ。
そんな彼が朝一の食堂へ来たのは、もちろん食事が目的ではない。
それでもトレイに一人分の朝食を準備し、本来の目当てを探した。
窓際の席で、お上品にパンを一口大にちぎっているその姿。
「よう」
軽く声をかけて向かいの席へ座ると、怜也は驚いて顔をあげた。
「あ、お、おはよう」
すぐに視線がそむけられた。
昨日のことを気にしているに違いない。
ぎくしゃくした警戒心が、伝わってくる。
一方の凱は、まるで何事もなかったかのようにふるまった。
パンをかじり、コーヒーで流し込むとやはり気軽に声をかけた。
「午後、空いてるか?」
「え? あ、うん」
明日は土曜日。
補習も模試もないし、丸一日学校はお休みだ。
そのうえで、凱は怜也を誘った。
午後、一緒に出かけないかと誘ってみた。
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