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第二章・6
「またな」
「うん」
男子寮へと登ってゆく怜也を見送りながら、凱はやたら照れていた。
男を真面目に1から口説くとか、ありえねえ。
そんなことを考えないでもなかったが、怜也は可愛すぎた。
キスの時に震えていた、あの肩。
手に触れた柔らかな髪。
甘い吐息。
俺のものにしたい、どうしても欲しい。
見送る時間さえ心地いい。
食いたかったら食う、飲みたかったら飲む、寝たかったら寝る。
そんな好き放題に生きてきた中、初めて待った。
怜也を待つことを、始めた。
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