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第二章・7

 真面目な怜也に合わせることは、大変だった。  授業をサボって誘いに行くと、逆に説教をくらった。  わずかな休憩時間に姿を捜し、見つけたと思えば残り5分。  それなら夜にと忍んで行けば、もう寝るからと早々にさよなら。  しかし、そんな事を繰り返すうちに、凱は怜也の一日のリズムを把握した。  決められた時刻に食事や授業をこなし、休み時間は大抵植物園や図書館、温室などあまり人の居ない場所で過ごすことが多いようだった。 「人の多い場所は、落ち着かないから」  そう話す怜也の表情は、硬い。  確かに落ち着かないだろう。  人込みに居れば、必ずその美しさに誘われた人間が視線を送ってくる。話しかけてくる。  軽く驚いたのは、結構頻繁にお誘いを受けている点だった。  夕食を一緒の席で摂りましょう、だの、休憩時間に遊歩道を歩きませんか、だの、放課後、勉強に付き合ってください、だの。  そして、どれも決まってお断りしている。  それもそうだろう、一人ひとりにいちいち向き合っていれば体がいくつあっても足りやしない。  そして、ひとりに付き合えば、浮いた噂がぱっと広まることだろう。  性別を超越した美しさを持つ怜也は、相手が女だろうが男だろうが、愛だの恋だのを絡めた眼で見られてしまうのだ。

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