22 / 144

第二章・8

 そんな中、一種の優越感を凱は感じていた。  怜也を物欲しそうに取り巻いているやつらに、舌を出してやりたい気分だ。  俺はAまで済ませてるんだぜ、と笑ってやりたい。  Bは未遂に終わったが。  そして、そんなキスを毎日繰り返す方法を編み出した。  おやすみのキス、というヤツだ。  夜に忍んでわずかな時間、共に過ごす。  ではおやすみと別れ際、戸口でキスを交わす。  一体誰が、こんな素敵なキスの仕方を考え出しやがったのか。  表彰してやるから出て来い。  凱は毎夜キスを繰り返した。  唇を合わせるだけの、お子様キス。  それでも、男子寮への長い石段を降りてゆく間、その感触を反芻してはニヤニヤしていた。

ともだちにシェアしよう!