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第三章 初夜
誰に相談しようもないので、凱は街へ出てネットカフェに籠った。
キーボードをたたいて検索する事柄は、ずばりそのものだ。
『男同士 セックス 方法』
よくよく考えてみれば、男とヤッたことなどないので勉強が必要だ。
ただ尻の穴に突っ込んでしまえばいい、と考えていた最初の時と今では気持ちが違う。
自分はそれでいいかもしれないが、怜也がただ痛いだけではあんまりだろう。
以前、女相手にアナルセックスを試したこともあったが、あの時は散々だった。
痛い痛いとわめかれるだけで、全く具合は悦くなかったのだ。
こんなに熱心に学習した事など、未だかつてなかった。
メモを取り、想像し、新しい単語を検索する。
そんなこんなであっというまに3時間は費やした。
(これは予想以上に大変そうだぜ……)
率直な感想だった。
カフェを出て雑踏を歩いていると、先程までもくもくとエロワードを検索していた自分が客観的に見えてきて苦笑いした。
何て滑稽なことを。
しかし、馬鹿なことほど真面目に向き合わねばならないものだ。
凱は大人びて見えるので、堂々とドラッグストアでローションを買った。
あとは、スキン。
生でやらせてもらえるならそれにこしたことはないが、ちゃんと用意しておこう。
一番大事なのは、お互いの信頼関係だそうだから。
しかし、と額に手を当てた。
無理せず、気長に、ダメそうだったら途中でやめる、とか!
これまで頑張ってきた怜也に対する気配りを、ベッドに上がってまで続けなければならないとは。
(いや、ここまで来たら後もう少しだ。がんばるんだ、俺)
とにもかくにもBまでこぎつけたのだ。
あと少しの辛抱だ。
こんなに我慢したことも、未だかつてなかった。
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