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第三章・5
夜、約束どおり凱がやってきた。
そして、いつものように一緒に本を眺めて、普段ならばさよならする時刻になっても彼は帰らない。
肩に腕を回されて、立ち上がった怜也の膝は少し震えている。
一歩一歩、ゆっくりと寝室へ向かう。
ベッドに腰掛け、キスを交わした。
始めは軽く、そして次第に激しく。
口づけを交わしながら、凱の手が体を撫でさする。
撫でさすりながら、衣服を剥いでゆく。
体を倒してゆく。
すっかり裸になってしまったところで、上からまじまじと見下ろされた。
恥ずかしい、と口にすることすら恥ずかしい。
怜也が手足を縮め震えていると、凱も服を脱ぎだした。
その肌に眼をやることも恥ずかしく、横を向いて耐えた。
やがて、すべて脱ぎ終えた気配がした。
「好きだ、怜也」
あぁ、初めて言ってくれた。
その言葉を、どれだけ待っていたかが初めて解かった。
体を重ね、口づけてくる凱の背中に、初めて腕を回した。
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