45 / 144
第一章・3
「演題は、ペルセウスとアンドロメダ姫ではどうかな。あれなら、登場人物も多いから皆で出演することができる」
海神ポセイドンの怒りを買い、いけにえにされるアンドロメダ姫を救う英雄ペルセウスの物語。
秋の星座の中でも、ひときわ華やかな神話だ。
これなら小さな子どもも、楽しむことができるだろう。
もっともらしいことを述べながらも、主役のペルセウスはやはり言い出しっぺの天知だ。
もう台本のあらすじもできている、とまで言われては反対のしようがない。
「あとは、アンドロメダ姫だけど」
そこで天知の視線がこちらに注がれるのを見て、怜也はぎょっとした。
まさか。
「アンドロメダ姫は、由良くんでどうかと思うんだけど、みんなどうだろう?」
「や。ちょっと待って!」
慌てる怜也を、拍手や指笛の騒がしい音が包む。
「アンドロメダ姫って、女性だよ!? 僕は、男なんだけど!?」
「でも、由良くんはあたしたちよりずっと綺麗よね」
「男女でやるより、面白いかも!」
女子たちにまでそう言われると、もう逃れようがない。
血の気の引いた怜也の頭の中には、それ以降の会話はほとんど入ってこなかった。
ともだちにシェアしよう!