46 / 144

第一章・4

「どうして最後まで教室にいてくれなかったのさ!」  その日の晩、怜也の部屋へ現れた凱を、泣き言が出迎えた。 「アンドロメダ姫? お前が?」  そりゃあ、お似合いじゃねえか、とニヤける凱が憎らしい。 「凱が反対してくれたら、僕はあんな役引き受けなくてもよかったのに」 「俺がいても反対しなかったぜ? 俺だって、お前のアンドロメダ姫見てみたい」  ヤだヤだ、と怜也は大げさに両手で顔を隠し、首をぶんぶん振った。 「天知くんに、お姫様抱っこなんかされたくない!」 「何ッ!?」  天知のやつ、最初からそういう魂胆で配役を決めやがったのか! 「そりゃあ、聞き捨てならねえな。よし、明日俺が、ペルセウスに立候補してやる」 「凱はもう駄目だよ。配役決まっちゃったもん」 「あの場にいなかったのにか」 「君は、アンドロメダ姫を襲う化け鯨、ってことになっちゃったよ?」  げげッ、と凱は妙な声をあげた。  欠席裁判で化け鯨役とは、どこまで嫌われたものか。  得意げな天知の顔が眼に浮かぶ。まったく鼻持ちならないヤツだ。

ともだちにシェアしよう!