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第一章・7
ゆっくりと押し、撫でるように襞を拓いて行くが、なかなか指は進まない。
第一関節までようやく入ったが、それ以上となると押し戻す勢いで絞まってくる。
「ごめん。凱、ごめん」
思うようにならない自分の体に、怜也は涙声だ。
その言葉に凱は指を抜き、怜也に口づけた。
「今夜は、やめとこう。ごめんな、怜也」
「ごめん。ごめん、凱」
いいんだ、と乱れた服を整え、髪を撫でてやった。
幾度となく、こんなことを繰り返してきた。
なかなか巧くいかない二人の体だったが、凱はそれでもいい、と怜也を大切に扱った。
きっと怜也は、俺以上に辛いに違いないのだから。
「好きだぜ、怜也」
優しく髪を撫でているうちに眠りについてしまった怜也を寝室に運び、頬にキスをして凱は部屋を後にした。
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