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第二章 天知と匠とワルの凱

 んが、と突っ伏していた机から顔を上げると、授業はとっくの昔に終わっていた。  怜也のやつ、起こしてくれてもよさそうなもんだが、ときょろきょろしてみたが、その姿はどこにもない。  何か用事ができたのかな。  寝ぼけ眼で大きくあくびをする凱に、おずおずと誰かが近づいてきた。  何やら薄い本が、自分の方へと差し出されてくる。 「あん?」 「あっ、あの、一ノ瀬くん。これ」  見ると、横山 匠(よこやま たくみ)が悪い顔色をさらに悪くして凱の傍らに立っている。 「何だよ、こりゃあ」 「あの、その、今度の演劇の台本なんだ。君に渡すように、預かったんだ」 「俺が化け鯨になるヤツか!」 「ひぃ! すッ、すみません!」  別にお前のせいじゃねえだろ、と凱は台本を受け取った。  ぺらぺらとめくり、配役や自分の出番の書かれているページを眺めてみる。

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