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第二章・6
「面白そうだな、お前ら」
凱の声にぎょっとした空気が広がったが、その声の主がクラスきっての不良と知って安堵の息が漏れた。
「やあ、一ノ瀬くん。よかったら、君にも分け前をよこそうか?」
全く悪びれたところのない天知に、凱は容赦しない事に決めた。
「分け前だぁ? そんなケチこと言わずに、こいつで賭けてみねえか?」
凱の手には、二つ折りにして無造作に輪ゴムで止めただけの札束が。
そして、二つのサイコロがあった。
凱の用意した金は、哀れな匠から搾り取ったものなど問題にならないくらい高額だ。
その場の少年たちは息を飲んで、凱とサイコロを交互に見た。
「俺が一振りでピンゾロ出せたら、こっちの勝ち。それ以外だったら、金はお前たちのもんだ。ボロいだろ?」
確かにこれは、勝ってくださいと言わんばかりの条件。
金に眼のくらんだ天知たちは、凱が目出しの練習を積んでいる事を全く知らなかった。
ちょっと想像力を働かせれば、この不良少年がイカサマなど簡単にできると予想できただろうに。
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