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第二章・8
「ほれ」
「え? え?」
「一服しようぜ。付き合えよ」
恐る恐る煙草を一本手にした匠に、凱は火をよこした。
震える指先で火をつけ、見よう見まねで咥える匠。
すぅ、と息を吸うと、額に手を当て上を向いてしまった。
「どうだ?」
「頭が、クラクラする……」
へへ、とその姿に笑う凱だったが、その声は匠に心地よく響いた。
これまで向けられ続けてきた、嘲りを含んだ笑いではないということが、ちゃんと伝わってきた。
「これでお前も、立派なワルだな」
「え!? ワル!?」
「そうだろうよ。ギャンブルで金をせしめ、その上モクまでやっちまったんだからな」
ワル。ボクが、ワル、と匠はつぶやいていた。
それ以上何も話さなかったが、一服終えた後には、落ち着いた足取りで去って行った。
全く世話の焼けるヤツだ。
まぁ、俺が背後にあると天知が判断すれば、これ以上匠がむしられることはないだろう。
とんだ道草を食った、と凱は再び怜也を探しに出かけた。
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