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第二章・12

「ええええッ!?」 「しッ! 声が大きい!」  むふん、と胸を張る天知は、実にスケベったらしい顔をしている。 「解かるだろ? 由良と僕は、周囲も認める似合いの仲なんだ。これをきっかけに、さらにその絆を深めようかと思ってね」  優しい怜也は、匠にとっても大切な人だった。  それが、天知に。天知なんかに!  あまりの衝撃に動けなくなり、気づいたら天知たちはいなくなっていた。  どうしよう。  どうしよう、どうしよう。  どうしよう、どうしよう、どうしよう。  ただ、このまま天知の言いなりになるのだけは御免だった。  そう、ボクはワルなのだ。  ワルは、こんな茶番に乗るような真似はできないのだ。  ワルと言えば、一ノ瀬くんだが。  ボクをワルにしてくれたのは、一ノ瀬くんだが。  匠は、大急ぎで凱の姿を探しに走った。

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