64 / 144

第三章 本当の英雄

 待ちに待った、秋の収穫祭。  講堂には生徒以外に、地域の大人や子どもが集まった。  人々は皆、大地の恵みに感謝し、祈り、その喜びを分かち合った。  荘厳な歌や華麗な舞が奉納された後、舞台は一般の人間へと開放された。  そして、我こそはという大人たちが、余興を始めた。  詩吟であったり、日舞であったりとどれも素晴らしいものだったが、いささか子どもたちにはつまらない。  退屈に感じ始めたその時、ペルセウスとアンドロメダ姫の劇が始まると聞いて、眼を輝かせた。  あの有名な神話なら知っている。  化け鯨は石になっちゃうんだよね、などとあらすじを囁きあいながら、じっと舞台を見守った。  

ともだちにシェアしよう!