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第三章・4
ぴくりとも動かなくなった化け鯨・凱を尻目に、天知は鎖に繋がれたアンドロメダ・怜也に近づいていった。
戒めを解き、そして。
「姫。もう大丈夫ですよ」
「あぁ、ペルセウス様」
どきどきと、天知の胸は高鳴っていた。
さあ、横山。ここで打ち合わせどおり、本番仕様のナレーションを!
そして僕は、由良に……、キスを……。
「するとなんということでしょう。石と化した化け鯨が、英雄ヘラクレスの姿に変わったのです!」
突然の匠のナレーションとともに、凱は被り物を脱ぎ捨てた。
「アンドロメダ姫。あなたのおかげで、呪いが解けました!」
何ィ!?
天知どころか、怜也が、劇を作ったクラスメイトが、舞台を観ていた衆人が、全て絶句した。
話が違う!
しかし、金銀の色紙をまとった張りぼてペルセウスより、こっちの方がウケがいい。
ハリウッド映画でCGアニメになった『ヘラクレス』は、大人も子どもも楽しめるエンターテインメントとして、話題になったのだ。
ペルセウスより、認知度が高い。
ぽかんとしている天知をぐいと押しやり、凱は怜也を抱き上げた。
「アンドロメダ姫に救われたヘラクレス。その数奇な運命に導かれた二人の美しい男女は、誓いの口づけを交わすのでした!」
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