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第三章・9
「んっ、やだ。凱の、ばか……」
濡れた音の合間に、怜也の囁きが漏れる。
「な、怜也。俺と同じこと、やって」
そう言って、凱はキスをしながら怜也の腕を手のひらでさすった。
ゆっくり、優しくさすりあげると、怜也の手もそろそろと伸びてきて凱の腕をさすった。
腕を、肩を、背をさする。
優しく、慈しむように互いを撫でた。
「んぁ、はっ。あぁ、ぅ、うん」
自然にベッドに体を横たえ、全身を撫で合う。
明かりのない暗い中、衣擦れの音が静かに響く。
怜也のひそやかな喘ぎが響く。
「好きだ、怜也。天知なんかに、お前を渡したくなかった」
「凱……」
素直な凱の告白は、怜也の体の熱を、心の熱を一気に引き上げた。
いつしか胸に降りていった凱の唇が、舌がその弱い部分を舐めてくる。音を立てて、しゃぶりついてくる。
「んぁっ。あっ、あッ、あぁんッ」
胸に顔を埋める凱の頭を、手で抱え込んだ。
柔らかな髪を撫で、指に絡めた。
体をいじられるだけでなく自分からも触れ、慈しむことで、怜也の心にはこれまでになかった余裕が生まれていた。
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