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第一章・3
「じゃあ、部屋でならいいんだな?」
開き直って、口説きにかかる。
今夜、泊まってもいいかと肩を抱く。
「……うん」
小さな返事。
頬を染め、うつむくその姿はいつも変わらず初々しい。
しかし、その返事にためらいの色があることも解かっている。まだ巧くいかないことの方が多いのだ。俺たちは。
挿入は、ずいぶん楽になった。
ただ、怜也の体調やメンタルの状態に、セックスは大きく左右された。
途中まで挿れて諦めたり、腰をやるとひどく痛がったりすることがしばしばある。
今夜は巧くいきますように。
そう考えることで、すでに怜也の心と体には緊張がもたらされているのだ。
そんなに難しく考えなくてもいいのに。
セックスできなかったからといって、俺が怜也を嫌いになることなんてありえない。
それでも彼の心には、どうしても申し訳ないという気持ちがあるらしく、よく泣いた。
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