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第一章・11

 煙草が短くなるにしたがって、少女はよくしゃべるようになった。 「ね、一ノ瀬さん。今、付き合ってる人とかいるの?」 「まぁな」 「う~ん、残念。でもさ、時々私とも会ってくれない?」 「よせよ、面倒くせえ」 「セフレでいいから。最高だったぁ。ね、またしよ?」 「気が向いたらな」  そんな言葉を交わした。  事が済んだら、さっさと少女を追い返した。  体だけの関係だ。変に期待を持たせると、後がやっかいだ。  一人になって、酒を用意し黙って飲んだ。  まただ。  また、怜也の寂しげな顔が浮かんでくる。 「おあずけばっかで、俺も辛れえんだよ。たまにはいいだろ」  自分で自分に、そう言い聞かせる。    久々に、体がサッパリしたことは事実だ。  しかし、それに反して心がやたら重苦しいのはなぜだろう。  明日、まともにあいつに会えっかな。  そんな事を、考えないでもなかった。

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