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第一章・16

 しかしベッドに腰掛け脚をぶらぶらさせていると、猛烈に酔いが回ってきた。 「やだ。ちょっとだけ横に……」  枕に顔を埋めると、凱の匂いがした。  それだけで、体が火照ってくる。  酔いも手伝い、心臓がばくばくと飛び出しそうに打っている。 「ふふ。早く来ないかな」  枕を腕に抱え、甘えるように頬ずりした。  大好きな凱。  今夜、僕は彼と……。  ちくり、と首筋に何かが当たった。 「ん?」  枕のあった場所に、何か光っている小さなもの。  手に取ってみると、それはピアスだった。  イミテーションだろうが、光る石の付いた可愛らしいデザイン。  どう見ても、女の子が身に着けるようなピアス。  酔いが、一気に醒めた。  ここに、女の子が寝たのだ。  凱と一緒に。

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