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第二章・4

「昨日……」  ようやく、そこまで絞り出した。  怜也は本から眼を離さず聞いている。 「昨日は、どうしちゃったんだよ。いきなり俺のとこ来て、酒なんか飲んじゃってよ」  できるだけ、軽いノリで話した。  そう、まずは左のジャブからだ。  いきなり核心を突いては、とんでもない事になりかねない。  返事がない。  それでも、一生懸命自分で話を続けた。 「結局寝ちまったな。でも、寝顔かわいかったぜ」  そこでようやく、怜也が顔を上げた。  瞳が潤んでいるのは、多分気のせいじゃない。  喉がひくりと動いた。  唇が震えている。  がんばって、声を出そうとしているに違いない。  あぁ、すまない。  こんな辛い思いをさせるつもりはなかったんだ。

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