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第二章・5
「僕も……」
「ん?」
「僕も、がんばって真面目をやめて、凱みたいに……」
「ぅん?」
「……凱に付いて行けるように、がんばってみたけど。だけど、やっぱり無理みたい……」
無理じゃねえよ、と凱は両手を拡げてみせた。
「俺達、今までうまくいってた。俺、お前の事大好きだし、お前も俺の事、好きだろ? な?」
「でも!」
そこで、凱はポケットから例のピアスを取り出して見せた。
さっ、と怜也の顔色が変わる。
やっぱり、原因はこれか。
「これ、昨夜見たんだろ?」
「……」
みるみる怜也の瞳に、涙が湧いてきた。
その姿を見ることが、こんなに辛いなんて。
女なんていくらでも泣かせてきたのに、こんなに胸が痛むのは初めてだ。
ピアスを地面に叩きつけ、靴底で踏みにじった。
砕かれたそれは、影も形もなくなった。
だが、怜也の心の中からそれが消えることはない。
俺が女と寝た事実は、消えようもない。
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