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第二章・6

「ごめん! 悪かった!」  ただ、頭を下げた。そうするしかなかった。 「お前がイヤなら、もう他の女とは寝ない! 絶対、浮気なんかしねえから!」 「……ごめんね」 「え?」 「僕が、僕がいつもああだから。凱の事、満足させてあげられないから、だから」 「待て待て待て!」   凱は慌てた。  それは違うだろう! 「なんでお前が謝るの、怜也!? 悪いのは俺だろ!」 「それは僕が」  もう、何も言わずに抱きしめた。  その細い体を、しっかり両の腕で抱いた。  怜也は驚いて体をすくめたが、振りほどきもせずただそのまま身を任せた。 「こうしてるだけで嬉しいし、幸せなんだよ。俺は」 「凱」  二人で抱き合い、ただその体温を交換し合った。  キスもしないし、肌に触れもしない。  もちろんハメたりなんかしていない。  それでも、充分満たされている。  心の底から歓喜が湧いてくる。  そう、無理なんかしなくてもいいんだ、怜也。  そのままのお前が、一番好きなんだ、俺は。

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