103 / 144
第二章・6
「ごめん! 悪かった!」
ただ、頭を下げた。そうするしかなかった。
「お前がイヤなら、もう他の女とは寝ない! 絶対、浮気なんかしねえから!」
「……ごめんね」
「え?」
「僕が、僕がいつもああだから。凱の事、満足させてあげられないから、だから」
「待て待て待て!」
凱は慌てた。
それは違うだろう!
「なんでお前が謝るの、怜也!? 悪いのは俺だろ!」
「それは僕が」
もう、何も言わずに抱きしめた。
その細い体を、しっかり両の腕で抱いた。
怜也は驚いて体をすくめたが、振りほどきもせずただそのまま身を任せた。
「こうしてるだけで嬉しいし、幸せなんだよ。俺は」
「凱」
二人で抱き合い、ただその体温を交換し合った。
キスもしないし、肌に触れもしない。
もちろんハメたりなんかしていない。
それでも、充分満たされている。
心の底から歓喜が湧いてくる。
そう、無理なんかしなくてもいいんだ、怜也。
そのままのお前が、一番好きなんだ、俺は。
ともだちにシェアしよう!