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第一章・2

「お前、今何周目だよ」 「47周。あと3周でおしまい」 「げッ。俺、あと5周だよ」  いつのまに、こんなに差が付いていたのか。  しかも、息も乱さず涼しい顔をしている。 「凱、煙草のせいで肺が弱ってるんじゃないか? 禁煙したら?」 「お前に10周抜かれるようになったら、考えてみるよ」  その言葉に肩をすくめると、怜也は、お先に、と走って行ってしまった。  夏の体育の時間は、汗をかく。  怜也の後ろ髪が汗で張り付き、白いうなじが艶めかしい。 (うほッ、いい眺め。後ろから走るってぇのも、なかなか♪)  邪な思いを抱きつつ、凱は残りを怜也の真後ろから離れず走った。

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