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第一章・4
怜也の背後に身を落ち着かせると、白いうなじが眼の前にある。
後れ毛を、すいと指に滑らせた。
「これこれ。色っぽいよなぁ」
「もう! さっきもずっと見てただろ!」
「当たり~♪」
怜也の体に腕をまわし、そっと引き寄せた。
白い首筋に唇を落とし、そのまま黙って水に身を任せた。
静かだ。
時折、水のたてるかすかな音。
外から聞こえてくる、蝉の声。
鳥のさえずり。
冷たい水を割って、怜也の体温が伝わってくる。
「疲れたか?」
「ううん、平気」
「そう」
そのまま、二人で水の中でもたれあった。
「いい匂い、する。ハーブ?」
「うん。ミント」
刻んだハーブを布袋に入れて煮出したエキスを、バスタブの水に混ぜているらしい。
清涼感のある香りが、とても心地いい。
すっかり凱に背中をもたれかけて、リラックスしている怜也が嬉しかった。
付き合い始めたばかりの頃は、身をこわばらせて緊張していたものだが。
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