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第一章・8
テント設営に水汲み、薪拾いに火起こし。漁に調理と、丸一日働かされて、凱はすっかり機嫌が悪かった。
「ったく、俺は奴隷じゃねえってぇの!」
それでも真面目に頑張るのは、怜也が同じ班にいるからだ。
おそらくは、班分けをした教師の策略。
聞かん坊の凱だが、怜也にだけは弱い事をすでに見抜いている。
「お疲れ様、凱。薪はこれくらいで足りるかな?」
「おう、上等上等。こんだけありゃあ、明日の分まで持つだろ」
「魚の内臓は、海に流してくるね。他の生き物の、えさになるよね」
「うん、頼むわ」
薪は重くて運べない、魚のワタなんか気持ち悪くて触れない、などと弱さを売りにする女は確かに可愛いが、長く付き合うとなると別だ。だんだん鼻についてくる。
凱は怜也の、見かけによらず芯のしっかりした強さが好きだった。
恋人である事には違いないが、その前に、互いに男同士。
愛しさとともに、頼もしくも思う。
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