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第一章・10

 しかし、凱には考えがあった。  時は夜だ。  今夜は、夜間実習のプログラムがある。  二人一組で夜道を歩き、そこここに隠れている突然のアクシデントに対処する能力を養う実習だ。  平たく言ってしまえば肝試し的なこの実習、二人きりになる絶好のチャンスだった。  それに、驚いた怜也がすがりついて来てくれれば、それはそれで美味しい展開になる。 「ダメだよ」  にやける凱の下心を見抜くかのように、匠が否定してきた。  こいつは、テレパシストか!? 「実は僕、実習の振り分けを伝えに来たんだ。一ノ瀬くんは、奇襲をかける側。由良くんは、かけられる側。残念だけど、二人きりになるのは諦めてよ」 「何だとぅ!?」  凱は教師の背中を睨み付けた。  班は同じにしたくせに、どうしてここで気が利かないのか、あのオヤジは!  それなら、思いっきり奇襲してやる! 襲いかかってやる! 抱きついて、押し倒して、グリグリやってやるぅ~ッ!   凱の心の叫びは、夏の青い青い空に吸い込まれていった。

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