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第一章・11

 巧くいった、と天知はほくそ笑んでいた。  夜間実習。  暗い夜道を、怜也と二人っきり。  事前に教師の一人にギフトを贈り、それとなくパートナーの希望をほのめかしておいたことが利いたようだ。  収穫祭の演劇では思わぬ失敗をしてしまったが、今回は邪魔者の凱はいない。  キスくらいには持ち込もうと、心の準備をしていた。  名門のお坊ちゃんで成績優秀、おまけにイケメンの天知は大勢のガールフレンドに取り巻かれている。  それでも怜也の魅力の前には、その花々たちもかすんで見える。  同性ではあるが、この大輪のバラが欲しくて欲しくてたまらないのだ。  意気揚々と、頼もしい男をアピールだ。 「由良くん、僕がついてるから心配ないよ」 「そんなことより、足元ちゃんと見て。毒蛇が這って出ることもあるんだから」

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