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第一章・12
途端に、天知は青ざめた。
毒蛇。
確かに教師が、そんな注意事項を言っていたような。
手にした小型の電灯を、足元に向ける。
長い棒で茂みをかき分けながら歩くが、がさり、と物音がするたびに、心臓がびくんと跳ねた。
「ふふ。天知くん、怖いの?」
「いやぁ、怖くなんかないさ」
そう、怜也の前でカッコ悪いところなど見せられない。
毒蛇などより、この美しい同級生を墜とす方が重要だ。
「由良くん。僕は、君に伝えたいことがあるんだ」
来た、と怜也は身構えた。
普段からそうだが、自分は他人から色目で見られることが多い。
天知の好意はいつもあからさまだし、今回この機会に踏み込んでくる事態は予測していた。
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