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第一章・14

 天知の野郎、怜也から離れやがれ。  青白いLEDを操りながら、茂みに潜んでいた凱は舌打ちした。  しかし、怯えた天知は怜也にかじりついて動かない。  歩みまで止めてしまって、一歩も動けなくなってしまった。  これはもう、無理やり引きはがすしかない。  凱は茂みから踊りだして、天知に飛びかかっていった。 「おらァッ!」  その途端、がつん、と顎の下から掌打が突き上げられ、凱は仰け反った。  間髪入れずに、腹に正拳が抉り込まれてくる。 「おぉ……おッ!?」  まさかの怜也から反撃が!   凱の奇襲にへたり込んで動けない天知を守るかのように、怜也が応戦してくる。 「そりゃないぜ、怜也!」  仮にも恋人、のはずである。  その惚れた相手に、殴り掛かってくるだとぅ!?  しかしそう言いながらも、凱は喉でくっくと笑っていた。  そうこなくっちゃな。  昼間は自分に都合のいいように考えていた事ではあるが、驚いてパートナーにすがりつく、なんて怜也には似合わない。  そう、こいつは恋人である前に、一人の男なんだ。  相手にとって不足無し、だ。

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