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第二章 思い出とこれからと
テントは狭いが、中は意外に快適だった。
朝に備えてゆっくり休み、体力を回復させるのもまた勉強のうち、と早々に寝かしつけられた。
同じ班のメンバーは天知や匠を始め、皆ぐぅぐぅとぐっすり眠り込んでいる。
普段使い慣れない筋肉を、それなりに酷使したのだ。これは朝まで目を覚ますまい。
彼らを挟んで向こうに寝ている怜也に向けて、凱は囁いた。
「……怜也、起きてる?」
「うん」
「散歩でも、しねぇ?」
「いいね」
苦笑いをした。
これまでの怜也なら、勝手な行動は許されないとたしなめてくるところだ。
少しずつ羽を伸ばし始めている彼の心が嬉しかったし、またそうさせたのは俺なのだというくすぐったい優越感が凱の胸に広がった。
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