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第二章・9

「…くッ。が、い。凱……ッ」  脳髄がとろけそうな快感が、凱を襲った。  俺の名を呼びながら昇りつめてゆくなんて。  例えようもない歓喜に、身を震わせた。  愛されている実感というものが、こんなにも甘美だったとは。  ふいに、大きな波が訪れた。二人の体が、さらに強く深く繋がった。 「あぁ!」 「……ンッ」  二人、ほぼ同時に達した。  海の水に混ざって、凱の腹に温かな体液がまとわりつく。  怜也の体内に、熱い滾りがもたらされる。  凱は、しがみついて細かに震える怜也を、しっかり抱きしめた。  離したくない。いや、離れたくない。  このまま二人、ひとつに溶け合って海になってしまいたい。  月の光で銀色に輝く波の中で二人は、しばしの間、海に還った。

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