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7.二人きりの体育倉庫で

 窓もない体育館倉庫の扉が突然閉められ、おまけに外からしかかけられない鍵が、かかった音がしたのであった。二人して扉の方を見て、杉田くんは急いで扉の方に駆けて行っては『ちょ、おい! まだ中にいるんだけど!?』と声をあげているがしかし、僕はと言うと…… 「ひっ……」  と、小さく声をあげてはガバッとその場に蹲ってしまう。真っ暗。まだ目が慣れていないこともあり、深淵のような真っ暗さ。生来の性、僕は暗所恐怖症なのだ。杉田くんも入り口の方に行ってしまったし、縋る相手もおらずにその場でブルブルと震え出す。 「おい、誰だよこんな悪戯!! おい聞いてんのか? 開けろ!!」  僕が震えているのに、杉田くんはまだ気づかないでドアをドンドンと叩いている。から、後ろから小さく『すぎたくん、』と名前を呼ぶけどそれにも気づかない。暫く杉田くんは扉を開けようと画策して、数分立った所でハッと、僕の気配があまりにも小さいことに気がついて振り返る。その頃には大分、暗闇に目が慣れてきたところであった。 「っ水谷? どうした……え、そこにしゃがんでるのか?」 「……はっ、すぎたく……こ、こわ、こわい、ぼく、僕、」 「水谷!?」  ああきっとコレは、メガネの野郎の仕業だ。それしかない。それはそれとして、本当に暗闇が恐くて仕方なかった。僕はまだガクガク震えている。杉田くんが、僕をずっと避けていた杉田くんが駆け寄って、僕の前に膝をついては背中を摩ってくれる。 「恐い? 水谷、どうしたんだ。こんなのすぐに誰かが気付いて開けてくれるって」 「そ、じゃな……くて、ぼく、その……暗い所がその、苦手で、ふぇっ、」  恐怖と同時にやってくる杉田くんの温もりに、逆に泣けてきては僕は涙を流し出す。情けない高校二年生だ。でも仕方ないのだ、生まれつきなのだから。メガネの野郎、僕をこんな目に合わせて後でビンタだ。思いながら涙を零しながら、杉田くんの心配げな男前を見上げる。暗がりの中目が合うと、杉田くんがハッとして、目を逸らしかけて止めた。 「水谷、そうかお前、暗所恐怖症だったのか……大丈夫、大丈夫だ。そろそろ目も慣れてきただろ?」 「う、ん……でも、こわいのかわんな……」 「水谷、俺が見えるか」 「見える、見えるよ杉田くん……ふぇ、でも……やっと、ちゃんと目を見て話してくれた」 「!! 水谷っ」  そんな僕の、美少年の僕から自然に出た可憐さに、杉田くんがガバッと僕を抱きしめてくれた。ひゅっと息を吸って、僕ははあっと息を吐く。杉田くんに抱きしめられると、こんな暗闇でも少しだけ安心した。 「お前、こんな時にそんなこと気にして……ごめん、ごめんな俺。自分勝手にお前のこと放っておいて、」 「ううん、良いんだ。元はといえば、僕が変なもの見せちゃったのがいけないんだから」 「だっから、お前は一ミリも悪くねーって!! 悪いのは俺の夢でっっ!!」 「杉田くんの、夢?」 「あっ」  暗がりで杉田くんが頬を染めたが、それもこの暗闇のせいで僕には見えなかった。倉庫の床に乙女座りになって、抱きしめてくれる杉田くんの温もりにただ擦り寄る。杉田くん、優しい。格好良い。こんなシチュエーション、誰だって杉田くんに一溜りもなくなるだろう。相手が僕で良かった、そう思う。 「ふふっ、杉田くん変なの」 「……はぁ、やっと笑ったな」 「え」 「水谷はやっぱり、笑った顔が一番かわいいよ」 「っっ!!」  心音が高鳴る。何をいってるんだ杉田くん。なんで、どうしてこんな、二人っきりで暗闇で、抱きあっている時にそんな、期待させるようなことを言うんだろう。理由は単純だ。杉田くんは何も考えていないのだ。天然なのだ。天然たらし。そんな言葉が頭を過ぎる。でも天然だって、僕の心を燃え上げさせるには充分すぎた。頬を染めて色んなドキドキが混じった身体で表情で、杉田くんをジッと見上げる。 「また、かわいいっていってくれた」 「あっ」  『しまった』というような声が漏れたがそれもお構いなしに、そっと杉田くんの頬に触れる。 「杉田くん……あのね。ぼくも、杉田くんのこと格好良いっていつも思ってる」 「みっ、みずや、だ、だめだって」 「何が駄目なの?」 「いやっ、な、なんつーかそのっ……」 「杉田くん、あのね、ぼく、」  続きを言う代わりに瞳を閉じる。瞳を閉じたから見えない前面で、杉田くんがガッチガチに固まった全身のまま、僕の至近距離までそっと近づく。甘い、甘い沈黙だった。 「……水谷っ!!」 「んっ♡」  僕の名前を呼んで、杉田くんはちゅっと短く下手くそなキスをしてくれた。大きな猫目を開くと、真っ赤になった杉田くんと目が合う。杉田くんは僕の身体を離してしまおうとしたけれど僕がそれを許さない。僕から杉田くんに擦り寄って……杉田くんの頬に頬擦りする。 「えへ、キスしちゃったね」 「みっ、みずや……わ、悪ぃ俺つい! てか、離れろって!?」 「なんで? 杉田くんのキス、ふわふわで気持ちよかった、ね、もっとしよ?」 「だっ、だめだだめだこれ以上したらだってっっ……ふっ!?」  今度はちゅ、と軽く僕からキスを返す。至近距離、吐息がかかるくらいの距離のままで悪戯っぽく杉田くんに涙目で微笑んで、すると一気に杉田くんが燃え上がる。僕をガバッと後ろのマットに押し倒して来て、まるで彼は正気じゃない。その瞳をぐるぐると渦巻かせるほど興奮して、杉田くんは、 「お前がっ……そんなに無邪気なのが悪いんだからな!!」 「ふぁっっ……♡」  そう言って深く口付けてきて、下手くそだけれど舌を使って僕を絡めとってくる。無邪気とは何ぞや。と、僕は半笑いだけれども嬉しくて、杉田くんとだってディープキス。べろちゅーしてるのだ。温かい、きもちいい。ちゅ、ちゅる、ちゅく、と杉田くんが一生懸命僕の舌で遊ぶのに、僕も杉田くんの舌をジュジュッと唇で吸い上げて答える。と、一瞬顔を離した杉田くんが切なげな、雄の匂いのする表情で『はぁっ』と息を吐いた。 「おまっ……そーゆーのどこで覚えてくんだよ!?」 「えへっ、ないしょ♡ んぅっっ」  僕の上の杉田くんの首に腕を回して、杉田くんを引き寄せてはまた深くキスをする。ああ僕達、やっぱり両思いじゃないか。やっとやっとこの時が来たのだ。嬉しい!! 暗がりへの恐怖も甘美な恋の香りで忘れられる。杉田くんは箍が外れたように僕のTシャツの中に手を入れる。胸元を探って、桃色の乳首を見つけるとそれをキュウっと摘まんで次はコロコロ、指の腹で転がしてくるから快楽がやってくる。 「あっ♡ あっ♡♡ んっっ……なにするのぉ、すぎたくんっ♡」 「水谷が、水谷が悪いんだ。お前がそんなにかわいいから、無邪気で、天然で、俺を誘うから俺はっっ!!」 「やんっ♡ やぁっ♡ すぎたくんっ……そこ、ちくび変な感じするよぅ♡ 杉田くんの指が、変なことするのっっ♡♡」 「変なこと、水谷は知らないんだな……じゃあ、これはどうだ?」  勿論知らないわけはない。何度杉田くんでイメトレしたことか。大体普通の男の子は、乳首でこれほど最初は感じないのではないか。こんなにも善がるのは弄り慣れている証拠なのに、童貞の杉田くんはそれに気づかず僕を『無邪気』だと感じているようだった。Tシャツが本格的に捲られて、暗がりの中顔を出した僕のおっぱいに、杉田くんが一度唾を飲み干してからパクリと喰らいついてくる。 「ひゃぅっっ!!?」 「んっ……ふぅ、」  ぢゅううっっ♡ 杉田くんが強く片方を吸い上げるから、快感で僕は腰を浮かせる。もう片方も強く摘まんで引っ張って、だから僕は、僕の可愛らしい股間は自然と押しあがって主張してくる。でもそれは杉田君も一緒。僕とキスして、僕のおっぱいをいじって、杉田くんは興奮した股間を僕のそこに擦りつけて腰を揺らしている。男同士で短パン越しに勃起した性器を擦りつけあって、もう、我慢も限界だった。 「あっ♡ あっ♡ あっ♡ すぎたくっ、すぎたくんっっ♡♡ おちんちんやだぁっ♡♡ むずむずしてっっ、もっ、擦りつけたらぁっっ♡!?」 「はっ、はっ、はっ、みずや、水谷っっ! お前、ほんっと、かわいすぎっっ、だ!!」  ずるんっ! と、杉田くんが僕の下穿きをいっぺんに全部脱がして、僕の勃起ちんぽをぷるんと空気に晒す。僕の男の子の証である。でもそれを見ても杉田くんは止まらない。女の子じゃない僕に、杉田くんは確実に興奮している。その事実が嬉しくて、またぢゅるっ♡と乳首を吸われて先走りをぴゅるっと飛ばす。杉田くんは片手で僕のおっぱいを愛撫しながら、彼の下穿きも膝まで降ろす。ちらっとみたら杉田くんのそれは……ちょっとギョッとするほど立派だった。バキバキに勃起して、今にも僕のナカに入りたそうに先走りをだらだら零していたが杉田くんは、やっぱり童貞だからただ僕のかわいいおちんちんと、彼の凶器をまとめて擦り上げだす。  ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ♡ 「あっ!? あっ♡ うそっっ、 おちんちん一緒にっっ♡♡」 「はぁっ、はぁ、はっ、みずや、はぁ、みずや、みずやっっ!!」 「ふぁっっ♡ うっっ♡!? あっ♡ すぎたくっっ、きちゃうっ♡ なんかきちゃうぅっっ♡♡」 「あぁっっ、水谷、射精(だ)せっっ! 俺と一緒に扱かれてっっ、乳首弄られながら、俺の見てる前でっっ!!」 「やだぁああっっ♡ はずかしっっ、こんなっっ、すぎたくっ、こんなのへんっ、ぼく、へんになっちゃっ、アッ♡♡♡」 「くぅっ!?」  最後にぢゅううううっっ♡ と一緒に強く乳首を吸われて、腰を浮かせて杉田くんの凶器に自分のを押し付けて、僕は杉田くんより一足先にイってしまった。ぴゅるっっ、ぴゅぴゅっ♡♡ 飛んだ精液が僕の胸に引っ付いて、しかし杉田くんはまだ達していない。達してもまだ萎えてはいない僕の性器を、イキっぱなしの僕の性器をまだまだ擦ってくる。 「アッ♡ あっっ♡♡ やっっ♡ ぼくっっ♡♡ もっ腰震えてっっ♡♡ ぅあっ♡」 「わるいっっ、わりぃっっ♡ も、すぐ……俺もっっ、射精(だ)すからっっ……うっっ!!」  ドピュッッ!!  腰もガクガクで涎をたらしている僕の唇にまたキスして、キスしながら杉田くんはやっと達した。その精液も、僕の体に飛んで引っ付く。 (ああ♡ 杉田くんのせーえき♡♡)  飲みたかった。飲んであげたかった。でもそれはまだもう一歩、進まないといけないことなのだ。杉田くんの身体から力が抜けて、杉田くんは良く鍛えられた重い身体を僕の上にぼすっとのしかけてくる。その苦しさもただ愛しくて、ガクガクだった僕も落ち着いて、顔の横に倒れ込んで『は、はー』と息を荒げている杉田くんが愛しくてその短髪を撫でてあげた。 「もう、杉田くんってば♡ 僕、女の子じゃないのに……おっぱい弄っておちんちん弄って♡ 変にしちゃうんだからぁ」 「はっー、はっ、わ、るい……水谷、俺、」 「良いよ、僕。杉田くんになら何されても良いもん」 「っっだからそうやって、簡単に『何されても』とか言うなって!!」 「ええー、だって本当だし……」 「水谷、お前なぁ、」  呆れたように腕を突っ張って顔を上げて僕を見て、杉田くんが眉を曲げるから可憐にニコッと微笑んだ。そしたら杉田くんが、精液塗れておっぱい丸出しの僕に再燃して、また僕に口付けを……、  ガチャガチャ!! 「「!!」」 「おーい、誰か中にいるのか? 今開けてやるからな!!」  体育教師の声であった。僕達は急いでズボンを穿いて、ひとつ顔を見合わせてから精液を引っ付けたままで僕はTシャツをずり下ろして、二人はふらふらした足取りで立ち上がる。入り口の方に行って、まるで助けを待っていたかのようにコンコンと内側から返事をする。 「先生、俺です! 杉田と水谷です!!」 「おう、お前らだったか!」  ガララ、と扉が空いて、眩しい外の光が倉庫内にも入ってきた。中を覗いた体育教師は、僕達の頬が赤いこと、眼が潤んでいることに一瞬戸惑ったようだったけれど次には一人納得する。 「よしよし、恐かったな。すぐ気がつかなくて悪かった、不安だっただろ」 「いや……その、まあ、」 「せんせい、ありがとうございます」  言葉を濁す杉田くんと、ニコリと華やかに笑う僕に、やっぱり教師は首を傾げてしかしパンパンと手を叩く。 「SHRはもう終わったぞ。お前らの担任も探してたから、挨拶のひとつくらいはしてから部活に行くことな」 「「はい、」」  杉田くんとの関係が、また一歩深まった♡ これはあとで、メガネ野郎にアイスでも奢ってやろう! そう思っては杉田くんと並んで職員室まで行って担任に挨拶をして、それから少し照れくさそうにでも何でもないように、僕達はそれぞれの部活動へと向かったのであった。 (あっ、それでもまだ杉田くん、僕に『好き』って言ってくれてない、)  これはまだまだ、彼からその言葉を引き出すために作戦会議が必要だな。そう思ってニンマリする僕である。

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