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第9話

見慣れないスニーカーが玄関に並べられていた。 いつものように爺ちゃんの部屋に顔を見に行く。 ただいま〜と、朝と変わった姿にどういう反応が返ってくるのか想像ができなくて、爺ちゃんの部屋のドアを開けるのを少し躊躇してしまった。 ものは勢いだ!と勢いよくドアを開けると、いつもの席に爺ちゃんが居て、開いたドアを見るように振り返った、紀明さんが居た。 「連絡が取れなくなったと心配して来てくれたぞ。ちゃんと話し合いを。」 俺に拒否権は用意されずに、俺と紀明さんは俺の部屋へと一瀬さんに連れて行かれた。 俺は勉強机の椅子に、紀明さんはベッドに腰を下ろした。 スーツ姿の紀明さんは初めて会った時に見たけど、やっぱり好きだって欲目を抜きにしても格好良い。 どちらも口を開く事はなくただ無駄に時間が過ぎていく。 何から話せば良いのか。 「幹都、」 ただ名前を呼ばれただけ。 それが嬉しくて、紀明さんの顔を見た時には、涙が止まらなくなった。 驚いた紀明さんはきつく、息苦しいほど俺を抱きしめる。 「会いたかった」 俺から出たのは、それだけ。 紀明さんは俺の頭を抱えて、濃厚な、鼻が詰まって息ができない俺のことなんかお構いなしに、初心者向きでは無い、濃厚なキスをした。 口の中を舌で掻き回し、逃げようとした俺の舌を吸い、本気で酸欠になった俺はグッタリと紀明さんに崩れ落ちるように、胸にもたれ掛かった。 「死ぬかと、本気で、死ぬかと思った」 酸素が頭に回るまでにかなりの時間がかかった。 紀明さんは、その間ずーっと、幹都が好き、大好きなんだ、連絡取れなくなって悲しかった、泣きながら俺の頭を撫でて居た。

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