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+月ノ夜+【涼介side】1/2

 瑞希に初めて会ったのは、転校初日。  オレが自己紹介をした後、指された席に座ったら、すぐに隣から話しかけてきたのが瑞希だった。  初めて会った時から、可愛いと思ってしまった。  その時は完全に、ルックスで。  なんで男なのに、こんなに顔、可愛いかな。  好みにはまり過ぎて、びっくりした。  なんで女やないんかなー。残念。  軽く、そんな風に思った程度だった。  その日に友達になって。そこから高3まで、クラスも部活もずっと一緒で。生徒会まで一緒に入ると、もはや、常に瑞希が側に居る。  ――――……素直なとこ、まっすぐなとこ、意地っ張りなとこ、頑張り屋なとこ。全部、可愛くて。  ただでさえ、ルックスが好みなのに。性格も大好きで。  コロコロ変わる、表情も好きで。……好きでしょうがなかった。  でも、やっぱり、男。  男は無理。  そう思って踏みとどまっていた。  女の子にモテたので、何人か付き合いはした。  告白してくる子は、顔の可愛い子が多くて、顔だけなら、瑞希でなくてもええかな、なんて思う事もあった。  何より、「女の子」。  付き合っても、手をつないでも、それは、至って「普通のこと」で。  正直、楽だった。  好きになっても、良い。  性欲を感じたって、普通。  何も、悩むこともなくて、楽だった。  何人かと付き合って、そういう関係にもなって。でも結局いつも別れが来た。振ったり、振られたり。  別れを切り出すのがどちらが先かという話だけであって、根本的な原因はもう分かってた。  オレが、本気で、彼女を好きになれてないから。  瑞希だったらこう言う。  瑞希だったらこう考える。  瑞希だったら、こんな顔で、笑う。  彼女と居て、どんなに考えないようにしても――――……。  直感的に、瑞希のことが浮かんで。  もう、どうしようもなかった。  合格した大学の内、どこに行くかを決めた時。  本当は、瑞希とは、一緒にはしたくなかった。  離れて、その存在が自分の世界から失われれば、きっと他に目を向ける事もできるんじゃないかと、思ったから。  なのに。  お前と過ごしたい、みたいに、言われて。  ――――……嬉しくて、断る事なんか、できなかった。  一緒に暮らすのだけは、どうにか、それだけはやめようと、踏みとどまったけれど。  高校時代、彼女と付き合うたびに、別れるたびに、興味津々で瑞希が聞いてくる。  それも少し、嫌になってきて。  だんだん付き合うペースは落ちていった。  よっぽど好みのルックスの女の子が、瑞希みたいな性格で現れてくれたら、別れなくて済むかもしれない、なんて思ったけれど。  それはもうその時点で、瑞希が基準になっているという事で。  ――――……もう、誰かと付き合う事を、諦めようかとも、思った。  まだその頃は、瑞希とは、ずっと友達で居ようと思っていた。  だけど、高校よりも、自由になった大学生活。  誰と一緒に居る、どこにいく、何をする。  選択の自由は、高校時代までとは比べようもない程あるのに。  どこにいくのも、何をするのも、結局は瑞希と一緒で。  瑞希も、それを望んでるみたいで。  穏やかに、2人でいる空間を――――……  誰にも、奪われたくないと、思ってしまって。  ――――……「恋人」という位置に立ちたくなった。  相当悩ませた、みたいだけれど――――……。  結局は、やっぱり瑞希は瑞希で。  こちらの気持ちも、存在も、一切否定する事なく、  最後は、あっけないほど、割り切ったみたいで。  恋人になる。付き合う、キスしてもいい、そういう事になってもいい。  信じられない事を、ポンポン投げてきた。  瑞希らしくて。  ――――……やっぱり、すごく好きだと、再確認して。  好きなように、触らせてくれて――――……求めてもくれる。  キスなんかは、むしろ、瑞希の方から、触れてくる事も多い位で。  可愛くて、たまらないんだけれど。  やっぱり、まだいまいち分からない部分もあって。  割り切り方が男らしくて、もう「こうだ」と決めたら、自分でもそれを疑わない瑞希。だからこそ、逆にこちらが心配になる。  いいんだろうか、本当に、と思ってしまう。  ――――……そこの部分が、引っかかって、「最後まで」は抱けない。  さわりっこ程度の愛撫とは、多分明らかに違う行為になってしまうから。  こんな、心配しながら、そんな事はできない。  キスして、体に触れて、イくとこまで。今夜もそこで、やめた。  もちろんそれでも満足なのだけれど――――……。

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