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第3話
昼休み。悠人は用があるから先食べてろって食堂に俺を残して中庭の方に消えた。
食堂はあまり好きじゃない。食べてる側を人が歩き回るから。
「ここ、いい?」
そんなことを考えてると頭の上から声がした。見たことある奴・・・
あ・・・石井。
「いいよ、どうぞ」
「珍しいね、いつも渡辺と一緒にいるのに」
トレイを目の前のテーブルに置く。石井こそ、いつも綺麗な顔した金髪の・・・んっと・・・あ!笠井、といるのに。
「なんか用があるんだって。すぐ帰ってくるよ」
「そう、俺は赤井と話して見たかったんだけど」
一見取っつきにくそうな外見なのに、話すと気さくでいい奴だ。何度か話したことがあるがよく気の利く奴。
「俺と?」
「いつも渡辺が一緒だから話しかけづらくて」
「そんなこと気にしないでいつでも声かけて」
「うん、これからはそうする」
意外と丁寧にカレーライスを食べ始めた。
190センチ近い長身。手だってでかい。でも荒々しくないんだよな・・・
食べ方に見惚れてると、石井の後ろの扉から悠人が入ってきた。
なんか、怒ってるな・・・
どかっと俺の横に座り、真正面に座る石井を睨んだ。
「機嫌悪いね、なんかあった?」
「シクったんだよ。あのヤロー、ふざけやがって」
シクる。珍しい。悠人がそんなこと言うなんて。
食べ終わった石井が立ち上がる。
「じ、じゃまたな、赤井」
「あ、うん。またね」
悠人を見て顔色が変わった?まあ、珍しいことじゃないけど。
「人を睨みつけない!」
「ああっ?睨みつけてねーし」
それが睨んでるんだって。
「早く食べないと間に合わないよ」
「食欲ねー」
ふっ〜ってため息を吐きながら鞄の中から朝コンビニで買ったパンを出した。
「食べる?」
「なあ・・・もしさ・・・」
「何?」
「なんでもねー」
「なんだよ、気持ち悪いな。はっきり言いなよ」
「誰かになんか言われても、ついて行くなよ」
隣の様子をちらっと見る。真剣な顔で俺を見てくる。なんかトラブルかな・・・
「わかった。なんかの時は・・・って悠人はわかってるだろ?」
「うん・・・まあな・・でも、ついて行くな」
「わかった」
こんな悠人は初めてかも・・・深く聞かず、俺は返事をした。
悠人の言ってたことってこの人のことかな・・
俺の目の前に金髪の・・・綺麗な顔・・・笠井がなんとも顔に似合わない不敵な笑みを浮かべてる。
「どうしたの?笠井」
「ふーん、俺の名前知ってたんだ」
いつも石井といるし。笠井は目立つ。そこら辺のヤンキーとは違う手入れの行き届いた金髪。黒い髪が伸びているのも見たことがない。
それに、服も。いつも着こなしがいい。センスがいい。悠人もセンスいいけど、笠井もお洒落だ。
「赤井君っていつも渡辺君といるよね」
隣に座って覗き込んでくる。こいつ、変なエロさがあるよな・・・
同類の匂いがする・・・
「そうだね」
「渡辺君は赤井君のもの?」
やっぱり・・・ビンゴだ。
「どういう意味?悠人は物じゃないと思うよ」
「ふーん」
腿の肘をつき、俺を観察しているように見える。
「渡辺君の首にキスマークつけたの、俺」
え?
「今朝、君が渡辺君の部屋に来るまでいたのは、俺」
悠人・・・笠井と寝たの?・・・2人が抱き合っている光景が広がって・・・ブルブルと・・・頭を振った。
「そう。それで?」
目を合わせずに聞く。
「赤井君のものじゃないんだったら、俺にくれない?」
「だから、悠人は物じゃないから」
悠人は女も男もイケる・・・バイだ。悠人が誰かを抱く。気配とか、名残りとか。
ずっと我慢してきた。でも、こんな風にヤッた本人に会うのは初めてだ。
嫌だ・・・こんなのは・・・酷い。
でも、・・・・羨ましい。そう思ってしまった。
俺にはしてもらえないことを笠井はしてもらったんだ・・・所有印までつけて。
「渡辺君さ、俺と付き合ってもいいって言ってくれたんだけど・・・」
付き合う?悠人が?言ったの?
「はっきり言って君が邪魔。幼馴染みかなんだか知らないけど、離れてくれない?」
悠人と離れる・・・?
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